匠たちのリレーコラム #8

「薪ストーブの薪」 小間豊

 

最近はどこの家でもエアコン以外の暖房器具と言ったら、ファンヒーターが主流らしい。

薪ストーブを使用している家は、私のまわりを見てもやはり数が少ない。

何かと手間が掛かるのが理由なのでしょう。

 

しかし薪の炎を見ていると、とても心が落ち着くという人もいて暖かさ以外の良い面もあるのだと思います。

薪ストーブの性能にもよりますが、煙突掃除をしなければならないし、薪の入手方法にしても丸太で手に入れると、その後の加工まで自分でやる事になって結構な仕事量となります。

 

私は丸太から薪にするまでの作業が好きなので苦にはならないし、積み上げた山が増えていくのも張り合いになったりします。

 

ご近所の好意で丸太を譲って貰っていますが、広葉樹でも針葉樹でも燃える木であればなんでも引き受けて、チェンソーで玉切りにしてから斧で4分割から8分割にします。

その後自分の背の高さまで積み上げていきます。

 

現場へ行ってから切らせてもらうこともありますが、状況が分からないので当然の事ですが、下見に行って話を聞いて倒す木の確認を取ります。

境界線が見える訳ではありませんから間違えて隣の木を切ったら大変です。

 

現場に入って改めてまわりを見ると樹種の豊富なことに気付くことが多くあります。

ひのきや唐松が木曽には多いのですが広葉樹も負けずにあるのです。

 

その中でも桑の木はよく目につきます。

昔の話ですが木曽ではお蚕で収入を得ていた時があって、餌となる桑の葉を採る為あちこちに植えられていたらしいのです。

人の背丈程で幹がやたら太いものがあります。

葉だけを刈られていた名残なのでしょう。

 

時には川辺近くにある桑の木に実ができると、口の中を紫色にして甘い味を楽しんだりジュースにしたり、同じ木に猿も実を食べに来ています。

 

昔に役目を終えた桑の木の丸太をいただいた時は、日常に使えるものに形を変えて残しておきたいと別な場所へ置いて様子を見たりもしています。

この様に色々なおまけを貰えるのも楽しみとなっています。

 

こういった地元の木に囲まれて、冬の間薪ストーブで暖をとれるのはありがたいことだと思うのです。

春になると積もった雪と薪がなくなって、又庭に作業スペースが現れるのです。

薪作りは毎回楽しいものです。

 

地域の人と木とを相手にしているからだと思うのですが、こうした作業は飽きることがありません。

木工の仕事の合間にやっているので、ちょうど良い息抜きにもなっているのです。