小間さんの工房を見学してきました。


お邪魔した日:2011年9月16日

お邪魔した人:飯島正章、狐崎ゆうこ、花塚光弘

写真と解説:花塚光弘

 

 

 



小間さん   飯島正章


小間さんの作品はどれを見ても、小間さんなりのひと工夫がしてある。
それがデザインの面でもあり機能の面でもありで非常に独特な世界を作り出している。
その中でもぼくがいつも面白いなと思うのは足の部分だ。
飾り台や小テーブル、少し大きめの器などにずいぶんたくさんの足が付いていて、

それがシンプルな直方体のものや、動物の足のような形だったりする。
どういう発想でそんなユニークな足が付いたのかお尋ねしたところ、

意外にも元々は足ではなくて高台だったのだそうだ。
普通は丸い形の高台だがそれを2分割、4分割、8分割のように

分割していくという発想だったとのこと。


だからといってあんなにたくさん付けるのはやっぱり普通じゃないと思う。
(多いもので16本くらいあった)
そして高台を分割することによって足っぽく変化していくと、

今度はその足を動かしてみたくなったそうだ。
ぼくにはその動かしたくなった足が、恐竜や動物の足のように見える。

そのようなイメージで作っているのかもしれないがほんとに面白い。
そしてたくさんの足がぴたっと平面に着地しているところがさすが。
足を本体にどうやって取り付けているかはお聞きしてないが、

取り付けたところに埋め木がしてある。

この埋め木がまたトリッキーでユニークだ。

木工をやっている人ならどうやったのか謎解きをするのが楽しみなところでもあると思う。

今回は工房の移転準備に重なってしまい、

見学できたのは工房から少し離れたところにある倉庫兼ショールームだった。
このショールームもちょっと変わっていて面白いけど、

工房のほうにはユニークな発想の道具などがあったのだろうなと思う。
工房を拝見できないのは残念だったけど、

自分の思い入れのある道具として繰り小刀を見せていただけた。
左右一対で、ずいぶん使い込んでいるように見える。
右使いのほうが若干鞘がゆるかったので、

こちらのほうが使用頻度が高くて研ぐことも多かったのだろう。
木工家の中には道具を偏愛する人がいて、

刃物の研ぎなど切れ味だけでなく驚くほど美しかったりする。
小間さんはどんな研ぎをしているのだろうとそっと鞘を取って見たところ、

割とざっくばらんな感じだった。
必要なときに必要なだけ研ぐみたいな感じ。
肩の力が抜けているようで、いい雰囲気だと思いました。
繰り小刀が思い入れのある道具になった原点は、「肥後の守」とのこと。
子供のころ肥後の守を持って林の中に入ると一日中出てこなかったそうだ。
東京は小平の出身。その当時は武蔵野の雑木林の名残がまだまだたくさんあったと思われ、

少年時代の小間さんがイメージできる。

小間さんは木工を始める前は舞台美術をしていたということで、

木工とはまた別の世界のお話も興味深かった。
そのころの経験は今の仕事の気持ちの上で影響があるとのこと。
木の匠たち展の中でなかで気になる人は、

自分と正反対のイメージのある土岐さんとのことだったけど、

その辺の過去の経験が大きいのかもしれない。

自分の思い入れのある材料として、フケかかった栃の木をあげていただいた。
テーブルなどの製品には使えないけど、額などには木目が面白くて積極的に使っている。
使い方がまたユニークだなあといつも見ているけど、

次回の木の匠たち展でもさらにユニークなものを見せていただけると思いました。

 

 

 


小間さんの工房   狐崎ゆうこ


小間さんの仕事は、偶然を素材にしている。
今回行ったのは工房ではなく、開店準備中のギャラリー。

工房の引っ越し先を探していたら、デジタル化のおかげでケーブルテレビの建物に空きが出ていて、

借りることが出来たそうだ。外見は小さな一軒家で入り口は普通の玄関。

でも中を見ると、事務所のようなのに小さい和室もついていたり、

防音のためか窓が二重になっていたり、テレビ画面が並んでいたらしい棚が残っていたりと

ちょっと変わっている。


展示している作品はテーブル、椅子、額、器などで、まあ一般的。

ただし材料に特徴がある。割れ、節などキズのある木を好んで使っているのだ。

そしてキズはそのまま見せるのではなく、埋め木などのひと手間を加えて、

自分のデザインにしている。
中でも栃で作った額が気に入っている。材の乾燥中に雨などかかって腐りかけてしまった。

薪にするしかないかと思ったが、試しにこれを使ってみたら実に渋い模様の額になったのだ。

これに味を占めて今ではすっかりキズ物が大好き。


この額を飾ってある壁も少し変。手作りの間仕切りで、

裏を見ると石膏ボードと角材をネジで仮止めしたかのような簡単な作りだ。

木工屋のくせにずいぶん雑だな・・・。
いや実は彼はずっと舞台や映画の美術の仕事をしていたのであった。

なるほど舞台のセット風。この美術さん時代の裏話はすごく興味深いが、今日は工房訪問なのです。

興味のある方は直接聞いてください。

ただ映画『ツィゴイネルワイゼン』での鈴木清順監督と樹希樹林の思い出は強烈だったようだ。
とはいうものの、彼が好きなのはジブリ映画で、

製作した器にはネコバスのように足がたくさんついている。彼自身も勢いのまま突っ走るタイプ?


「自分は削りすぎてはやり直し、ちょっと集中したらすぐ休みたくなって、

振り子のようにゆれている。土岐さんのように完璧な円を描くような

集中した仕事ぶりは真似できない。」


どうやら一直線に走っていくのではなくて、あちこち走り回るタイプのようだ。

もしかしたらこのギャラリーも、次に訪ねたときには全く違った様子になっているのかも。