遠くに望む単線のホーム、工房との間にひろがる田畑。
そして工房の裏手には猿がでるという里山。
槙野さんの工房は、まさに槙野スタイル、槙野ワールド。
けれど、作品や人柄からだけでは分からない
御家族の生活の場を生み出しているという
その愛情がムンムンと漂ようような
細さや細やかさも感じられる素敵な工房でした。
お邪魔した場所:槙野さんの工房
お邪魔した日:2010年11月27日
お邪魔した人:飯島正章、狐崎ゆうこ、花塚光弘、前田大作
槙野さんの仕事場は頑丈だった。
巨大な柱に梁、高い天井。横には屋根をさしかけた材木置場。
良さそうな板がたくさんある。これまた柱が太い。
その横に建て増しするべく、私たちが行ったときには、槙野さんが柱材を刻んでいた。
子供の送り迎えのために普通免許を取ったばかりで(今まではバイク乗りだった)、自分の車の車庫を作っているのだ。
さて仕事場の中は、結構広いのに大型機械が全くない。
電動工具はチェンソー、丸のこ、電動かんな、サンダーくらい。手工具は多い。
隣の小さな部屋に製作途中の椅子があった。
座面はかなり大きいが、板はぎは一切しない。
手加工したらしくまっ平らでなく、少し波打った感じがする。
そのほかの脚や肘掛などは鉈と小刀で削って身体が触れる部分はすこしサンディングして滑らかにしている。座ってみると見た目よりずっと身体になじむ感じ。
ていねいに削って調整しているのだと思う。
一人で木工をやっていると世捨て人扱いされることもままあるのだが、
実はそれなりに効率を重視して安く作ろうと苦労している人が多い。
そのために機械をそろえたり道具を工夫したりする。
だから槙野さんの作り方は美術品のようだ、と思っていた。別世界だな、と。
でも実用品として座り心地を大切にし、無駄な加工を省いている。
道具が違うだけで、同じ家具屋なんだな。
扉の真上に池田満寿夫の絵が貼ってある。男女が裸で絡んでる。
「ほら、あそこに池田満寿夫の絵が・・・」
槙野さん、わざわざ教えてくれなくても結構ですよ。