法嶋さんの工房

 

 法嶋さんの工房は3×6間の素朴な板張りの建物。仕事を続けながら、土日だけ通って半年かけて建てた。ご近所にも溶け込んでいて日当たりも良く明るい感じだ。

 

 以前は松本で、リフト付きのかなり大きな工場を使っていた。そこに移る前は自宅の縁側が仕事場だった。

 隣人がたまたま松本民芸の椅子職人で、法嶋さんを誘って廃業した工場を買ったのだ。その人はなかなかの世話好きで精力的な人だったみたいだ。法嶋さんを自分の仕事場に引っ張ってきて「半強制的に」南京ガンナを作らせたりしたこともある。今ではこのカンナは無くてはならない道具になった。

 ところが彼は急逝、突然一人でやることに。成り行きみたいな始まりだったけれど、この中川村では初めて一から1人で工房を作り上げたのだ。

 

 工房の中は半分以上機械でぎっしり。350㎜幅の手押しかんな盤。400幅の自動かんな盤、横切りと昇降盤は軸傾斜で、他にテーブルルーター、バンドソー、角のみ、ほぞとり用の昇降盤、糸鋸、ボール盤、金属用の小さいバンドソー。

 

 木工作家として1点物を作ることもあるが、仕事は選ばず何でもやってきた。得意なのは自らデザインを磨き上げ、「量産」すること。大量生産ではない、木材の性質に合わせた「少量のプロダクト」に興味がある。

 デザインするのは椅子などの家具だけではなく、ギタースタンド、トングなどなど、大きさも種類も様々だ。

 

 ちょうどルーターの上には加工中のトングの部品がある。小さい部材を機械で細かく掘りこんでいくのは難しそう。でも若いころに楽器製作の会社にいたので自然に身についている。

 

 注文で制作するときにも奇抜なものを求められるとうれしい。画期的な構造にしてやろうと思う。まあたいていは誰かに先を越されているのだが。
 変わった形の実物大の椅子の脚見本やJIGが上の方の棚にあふれている。

 

 同業者よりも他のジャンルとの交流が好き。鉄を取り入れたこともあるし、皮の加工法を習ったこともある。面白いことをしている人と付き合ってみると、今までの自分は甘かった、と思ったりもする。

 

 ここは、好奇心旺盛に様々なものを吸収し、形にしていくための小さな工場だ。

 

                           2023.6.7 狐崎

 

こだわりの道具はなんですか?

 

 突きがんな  

  普通の鉋よりも刃が前についているので端の方まで削れて便利。ハンズで買ったもの。